ZT (集団的自衛権)陰で動いた外務省 旧条約局出身者、与党協議に影響力
(集団的自衛権)陰で動いた外務省 旧条約局出身者、与党協議に影響力
2014年6月26日05時00分
他国への攻撃に自衛隊が反撃する集団的自衛権の行使を認めることで、自民、公明両党が大筋合意した。背後には、自衛隊が海外で活動する範囲を広げ、外交の選択肢を増やそうとする外務省旧条約局(現国際法局)出身者らの姿がある。侵略した国を国連決議に基づいて武力で制裁する集団安全保障でも、参加への余地を広げようと動く。
20日の与党協議。自民党はそれまで議題になかった集団安全保障による武力行使を突然持ち出した。複数の政府関係者によると、震源地は外務省だ。その原動力となったのは、集団安保に最も積極的な外務省旧条約局経験者らとされる。
与党協議の事務方の中心だった兼原信克・内閣官房副長官補は、外務省の国際法局長出身。外務省きっての戦略家と言われ、安倍晋三首相の知恵袋的な存在だ。首相がまだ年次の若い兼原氏を、次官級の副長官補に抜擢(ばってき)した。兼原氏は首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)も事務方の責任者として取り仕切った。
集団的自衛権は、他国であれ「守る」ことを基本とする。しかし、集団安保では、侵略など問題のある国をたたく行為で攻撃性が高い場合がある。慎重派には「実現へのハードルはむしろ集団安保の方が高い。憲法改正で対応すべきだ」(政府関係者)との考えが強かった。
首相はいったんは慎重派に軍配を上げた。集団安保の武力行使を認めない方針を決め、5月15日の記者会見で「政府として採用できない」と宣言した。
ところが与党協議が最終盤に入り、兼原氏をはじめ旧条約局出身者を中心とした巻き返しが起きる。旧条約局出身者らは、自民党の責任者である高村正彦副総裁に説明を重ねた。最終的には高村氏の理解を得て、安倍首相からも集団安保の武力行使も可能とする閣議決定案の許可を取り付けることに成功した。
その後、公明党の猛反対にあって、閣議決定案への明記は見送られたものの、集団安保でも武力行使をする余地は残った。ある旧条約局長経験者は「集団安保が与党で議論され、その痕跡が残ったことに意味がある」と評価する。
■湾岸戦争時の批判、トラウマ
安倍首相が再び政権に就き、集団的自衛権行使容認を目指すにあたって中核に据えたのが、外務省旧条約局長の経験者らだった。日本が集団的自衛権を行使することに前向きで、国際法に通じているため、首相にとって「理論的支柱」になってくれるからだ。
兼原氏を交渉の最前線に立て、安保法制懇の座長に柳井俊二氏が就いた。報告書を受け取る政府の国家安全保障局のトップには谷内正太郎氏を据えた。さらに、解釈変更を了承する立場の内閣法制局長官には、歴代長官人事の慣例を破り、駐仏大使だった小松一郎氏を起用した。(小松氏は23日、病気で死去)
外務省にとって集団的自衛権と共に、集団安保で日本が武力行使できるようにするのは悲願だ。そこにはイラクのクウェート侵攻を受けた1991年の湾岸戦争時の「トラウマ」がある。国連安保理決議により多国籍軍が組まれた集団安保だった。この時、旧条約局にいた外務省関係者は、こんなことを覚えている。
内閣法制局に「自衛隊に多国籍軍の負傷兵の治療をさせたい」と伝えたが、「憲法9条が禁じる武力行使の一体化にあたる」と否定された。結局、日本は130億ドルを拠出したが、「カネしか出さないのか」と米国を中心とした国際社会から強い批判を浴びた。湾岸戦争時に条約局長だった柳井氏は5月、朝日新聞のインタビューに「何とかしなければいけないという気持ちはずっと持ってきた」と答えた。
外務省は今年1月に発足した国家安全保障局に、若手の精鋭部隊を送り込み、谷内氏をサポート。同局の「与党対策班」が公明党への説得にあたり、閣議決定の文案作成も主導する。防衛省幹部は「官邸内を『条約局マフィア』が闊歩(かっぽ)している」と評す。
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